わかるともっとおもしろい!美術のミカタ「蘭島閣美術館」「横山大観」「南薫造」「蘭島閣ギャラリーコンサート」

2022.02.28

みたことある!知っている!
…つもりになっている有名絵画。
視点を変えると知らなかった
面白さがまだまだみつかる!
美術家で広島女学院大学教授の三桝先生が
有名美術作品の新たなミカタをご紹介します。

江戸時代には、潮待ち、風待ちの船が立ち寄り
海上交通の要所として栄えた下蒲刈島。
歴史と文化の香りが漂うこの島で
「蘭島閣美術館」の珠玉のコレクションをご覧あれ!

「蘭島閣美術館」が開館したのは1991(平成3)年10月26日。当時の下蒲刈町長だった故竹内弘之氏のもと、美術・歴史遺産及び自然科学資料に関する住民の知識及び教養の向上を図ると共に、文化の発展及び生命の尊厳を学び、並びに教育、学術研究及び文化交流に資するための施設として設立。そして2021(令和3)年、めでたく開館30周年を迎えました。

下蒲刈へは本土から安芸灘大橋を渡ると到着です。江戸時代より潮待ちの場所として栄えたこの場所には、今も尚かつての港の街並みが残っており、美しい風景と自然が味わえます。海に面した海岸線には様々な観光施設(蘭島閣美術館別館・松濤園・三之瀬御本陣芸術文化館・白雪楼・昆虫の家)が隣り合っており、その中でもひときわ荘厳で、日本建築の美しさが目を引く総桧造りの建築物。それが「蘭島閣美術館」です。

蘭島閣美術館外観

鑑賞ポイント その1

驚きの質と量!
珠玉のコレクション!

「蘭島閣美術館」のコレクションの主は、近代日本美術を代表する作家、横山大観・竹内栖鳳・小林古径・福田平八郎・山口華楊・須田国太郎の作品ですが、それらをはじめとし、南薫造・船田玉樹など郷土にゆかりのある作品も多く所蔵しています。その数なんと約2200点。特に日本画・洋画の質の高さと作品数には本当に驚かされます。まさに必見、珠玉のコレクションと言えるでしょう。

館入口で靴を脱ぎ、スリッパに履き替え、全面絨毯張りの和空間の中を進んでいけば、近代日本の美はより一層輝きを見せてくれます。まるで珠玉の作品たちが迎え入れてくれているかのように、鑑賞する人の感性を不思議な驚きと感動へと導いてくれます。

横山大観「神国日本」1926-29(昭和元-4)年頃
蘭島閣美術館蔵

小林古径「紅梅」1941(昭和16)年
蘭島閣美術館蔵

南薫造「串山のみかん畑」1948(昭和23)年
蘭島閣美術館蔵

鑑賞ポイント その2

「心の潤い」の時と
空間を過ごすひととき
蘭島閣
ギャラリーコンサート

「蘭島閣美術館」では毎月第3土曜日18時30分から、珠玉の絵画に囲まれた美術館のホールで、NHK交響楽団のメンバーや世界レベルの演奏家・新進気鋭の若手演奏家などを招き、演奏の調べと美術との調和による「心の潤い」の時と空間を目的としたギャラリーコンサートを開催。約20年間にわたり開催され、今も続くこのコンサートは、幅広い人気を集め、これまでに3万人を超える観客が訪れています。

蘭島閣ギャラリーコンサート風景

鑑賞ポイント その3

文化の香りを味わえる茶室
「白雪楼」

「蘭島閣美術館」に隣接する「白雪楼」は、江戸時代の沼隅の豪農だった山路機谷が邸内に移築し、その祖父の重好が京都黒谷で営んだ奇好亭を楼造りに改め、漢学研鑽の場所にしたもので、当時は多くの優秀な漢学者がここに集い学んだと言われています。その後1892(明治25)年に竹原に移築し、1993(平成5)年に下蒲刈に移築され現在に至ります。

その「白雪楼」で、2012(平成24)年の夏にアートイン白雪楼「三桝正典展」を企画していただきました。下蒲刈の名産である「蜜柑」をテーマに、様々な表情で移ろいゆく瀬戸内の四季、蜜柑の花から果実までの場面のすべてを襖絵として描きました。

「白雪楼」には離れの茶室も含め3つの茶室が見学でき、来館者はお抹茶をいただけます※。当時の漢学者が研鑽に励んでいた場所で、歴史に想いを馳せ、瀬戸の風景を望みながら、文化の香りを味わう…愉しいものです。美術館のスタッフの方のおかげもあり、個展期間中2か月の来館者数は、前年度の該当期間に比べ大きく超えるものとなりました。
※有料

白雪楼外観

アートイン白雪楼「三桝正典展」展示風景「秋の間」

下蒲刈にはまだまだ紹介できていない「蘭島閣美術館」に隣接する観光施設がたくさんあります。さらに少し南に足をのばすと、同じく江戸時代に風待ち・潮待ちの港町として栄えた「御手洗(重要伝統的建築物群保存地区)」もあり、このエリアはまるでタイムスリップしたかのような感覚に浸ることができます。そして自然の原風景を目に映しながら味わう海の幸・山の幸もまた格別で、何を食べても美味しいのです。

イチオシはもちろん美術館鑑賞。合わせてここ「蘭島閣」を拠点にすれば日帰りでも充分楽しめ、五感を満喫できる観光地なのです。是非、お越しになってみてはいかがでしょうか。

・参考・引用文献 蘭島閣美術館ホームページ

公益財団法人 蘭島文化振興財団
広島県呉市下蒲刈町下島2361番地の7
http://www.shimokamagari.jp/facility/bijutsukan.html

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