わかるともっとおもしろい!美術のミカタ「ウッドワン美術館」「岸田劉生」「ルノワール」「ファン・ゴッホ」

2021.11.30

みたことある!知っている!
…つもりになっている有名絵画。
視点を変えると知らなかった
面白さがまだまだみつかる!
美術家で広島女学院大学教授の三桝先生が
有名美術作品の新たなミカタをご紹介します。

標高600mの高地、
原生林に囲まれた
廿日市市吉和にある
「ウッドワン美術館」
小規模ながら世界に
名だたる名画をはじめ
充実したコレクションが
来館者を惹きつけます。

令和2年(2020年)秋、西日本で初となる現代アートの「小松美羽展」を開催し、人口600人の町に15,000人以上の来館者を記録したことで、全国でも注目を集めたウッドワン美術館。初代館長中本利夫氏の出身地でもある、自然豊かな吉和にある小さな美術館です。

こちらは株式会社ウッドワンの所有する美術品約800点を展示、公開することが目的で、平成8年(1996年)9月に開館。主な収蔵作品は近現代西洋・日本絵画・マイセン磁器・アールヌーヴォーのガラス作品・中国清代の陶磁器・幕末~明治の薩摩焼の大きく5つのジャンルに分類され、充実したコレクションで来館者を惹きつけています。

小松美羽
長野県出身。国内外で人気を集める新進気鋭の現代アーティスト。令和2年(2020年)秋にウッドワン美術館で西日本初の個展となる展覧会を開催し、来館15,000人超えを記録した。同年、日本テレビ「24時間テレビ」のTシャツデザインを手がけた。
https://miwa-komatsu.jp/

ウッドワン美術館外観

鑑賞ポイント その1

美術館の魅力を引き立てる
目玉コレクション3点!

数多くのコレクションの中で、最も目を引くのが岸田劉生「毛糸肩掛せる麗子肖像」、ルノワール「花かごを持つ女」「婦人習作」、ファン・ゴッホ「農婦」の3点です。現在もコレクションの目玉として美術館の魅力を引き立てています。これらの作品に共通するのはオークションで落札され、コレクションされたことです。いずれも公開オークションだったため、落札価格が作品の内容と共に多くの人の目に直接映ります。落札の経緯そのものが作品の付加価値を高め、一つの物語として来館者に届けられます。

岸田劉生《毛糸肩掛せる麗子肖像》

ファン・ゴッホ《農婦》

ルノワール《婦人習作》《花かごを持つ女》

例えば、岸田劉生「毛糸肩掛せる麗子肖像」は日本人画家における最高落札額。ルノワールの「花かごを持つ女」「婦人習作」は国内オークションでは過去2位の高額落札を記録。そしてファン・ゴッホ「農婦」は、オークション直前にゴッホの真作と認定され、1万円程度とみられた落札価格が6,600万円で落札。いずれも当時のマスコミを賑わせました。どの作品の話題も“凄い”の一言。実物を見に行きたくなりますよね。

鑑賞ポイント その2

アンティークカップで
美味しいコーヒーを!

ウッドワン美術館のマイセン磁器コレクションは約200点を有し、西日本最大のコレクション数です。本館に隣接する新館ではアールヌーヴォーのガラス作品や、幕末・明治の薩摩焼とともにマイセン磁器が常設展示されています。ここでは初期の東洋趣味から華麗で優雅なロココ主義、歴史主義の作品まで、マイセン磁器の歴史を辿ることが出来ます。

新館展示風景

マイセン《色絵神話文双耳瓶》

美術館併設の喫茶店「カフェ・マイセン」の店内にも、マイセンをはじめとするヨーロッパ諸国の美しく繊細なアンティークカップや絵皿等が飾られています。これら優美な作品たちに囲まれ、四季折々に吉和の美しい自然を眺めながら、ゆっくりとしたカフェタイムを楽しんでいただきたいですね。

この喫茶店のメニューで、私のいち押しは自然のミネラル豊かな水で作られた「コーヒー」なのですが、何と!カフェに展示されているアンティークカップの中からカップを選んでコーヒーを楽しめるメニューもあるんです。ぜひ、お好みのアンティークカップで歴史の時を体感出来る、至福のひと時を過ごしてみてください。

アンティークカップを選んで《カフェ・マイセン》

鑑賞ポイント その3

行かないと体感できない
日本の現代アート!
ここにあり!

冒頭で紹介した、西日本での初の個展「小松美羽展」。全国的に注目を集める展開となったのは、日本の現代アートの魅力的な作家へいち早く着目していたことはもちろん、館長をはじめとする美術館スタッフの熱意が一丸となって企画に込められているからなのです。さらに、日本ならではの感性と伝統技術が根底にある日本の現代アーティストだからこそ、その企画が世界に向けて発信できるのだと思います。

小松美羽展

もちろん、ウッドワン美術館の日本の現代アーティストの企画展は「小松美羽展」だけにとどまりません。近年では、2021年の「大村雪乃展」、2019年の「前原冬樹展」、2018年の「吉村芳生と吉村大星展」などが開催されています。

大村雪乃《函館》

前原冬樹展

これからも、「ウッドワン美術館に行かないと体感出来ない現代アートとの新しい出会い」がきっとあるはずです。現代アートのコレクションも年々増えており、ウッドワン美術館の新たな魅力となることは間違いないでしょう!

ウッドワン美術館のある吉和は、私の初期の襖絵8枚を本堂に常設展示していただいている「専立寺(能島美緒住職)」がある、私自身にとっても大切な場所です。このお寺との繋がりがご縁で、ウッドワン美術館でも2014年に新館エントランスホールで個展を開催することができました。

専立寺の襖絵

昔からお寺はその地域の人々にとって仏像や襖絵などの多くの美術品を鑑賞できた場所でもあるので、美術館での展示で、その対比を身近に感じることができました。開催当時、多くの人にご来館いただいた思い出もあります。ウッドワン美術館の粋な計らいは、吉和に住む人と共に展開していこうとしていて、人の暖かさも合わせて感じることが出来た個展でした。

2014年 個展

オークション高額落札の目玉コレクション、マイセンのカップに直接触れ、味わうことのできるカフェ、そして新しい現代アートとの出会い。自然豊かな環境と美しい四季と共に楽しみが広がる山の中の小さな美術館。隣接する温泉にゆっくりつかって宿泊することもできる!オススメの癒しの場所です。

・参考資料 ウッドワン美術館ホームページ

公益財団法人 ウッドワン美術館
〒738-0301 広島県廿日市市吉和4278
https://www.woodone-museum.jp/

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