わかるともっとおもしろい!美術のミカタ「名勝 縮景園」「伊万里色絵馬」「南薫造」
2021.02.26

みたことある!知っている!
…つもりになっている有名絵画。
視点を変えると知らなかった
面白さがまだまだみつかる!
美術家で広島女学院大学教授の三桝先生が
有名美術作品の新たなミカタをご紹介します。
今回は、当時、中国地方初の公立美術館として
開館した「広島県立美術館」。
「名勝 縮景園」や
「伊万里色絵馬」
「南薫造」に注目してみましょう!
広島市内の中心に位置する広島県立美術館は、日本画家児玉希望がアドバイザーとなり1968年9月に中国地方初の公立美術館として開館。さらに1996年10月には名勝 縮景園との景観的な融合を図り新築再開館し、現在に至っています。
美術館の所蔵品は総数約5000点、靉光や南薫造、小林千古などの近代の日本洋画や、奥田元宋、和高節二、平山郁夫をはじめとする日本画・工芸・西洋画の名品が揃っています。美術館の地下には県民ギャラリー・講堂もあり、県民の企画展や各イベント、教育プログラムも充実しており、県民に「開かれた美術館」となっているのです。
広島県立美術館外観
鑑賞ポイント その1 名勝 縮景園の四季の |
「縮景園」は江戸時代初頭の広島藩主浅野長晟が庭園として築成し、上田宗箇が作庭した大名庭園です。儒学者の林 羅山(らざん)の詩の序文「海山をその地に縮め風景をこの楼に聚む」から「縮景園」の名称が付いたと言われています。
庭には四季折々の様々な花が咲き、色とりどりの色彩を感じることができます。季節ごとの花々の開花に合わせ、企画展や所蔵作品などの美術作品に逢いに来るのもいかがでしょうか?また違った作品鑑賞を楽しむことが出来るのではないかと思います!
名勝 縮景園風景
美術館内からみた縮景園
鑑賞ポイント その2 世界に5体しかない |
美術館2階の一室には、工芸作品の名品が陳列されており、そこには、世界に5体しかない伊万里焼の「伊万里柿右衛門様式色絵馬」のうち、2体が展示されています。伊万里焼は江戸時代中期から西洋へ大量に輸出された磁器で、その華麗な色絵を施した柿右衛門様式と呼ばれる作品は西洋人を魅了し、マイセンをはじめとしたヨーロッパの磁器焼成に大きな影響を与えました。
この2体の「伊万里柿右衛門様式色絵馬」は、広島県立美術館が所蔵する工芸作品を代表する作品です。知る人の多くは、大きな風船人形として美術館入り口に展示されていた様子が記憶に残っているのではないでしょうか。
どっしりとした安定感のある馬体、大きく見開いた目は、緊張感を醸し出すと同時にユーモアも感じさせます。さらに華麗な文様は作品全体の美しさを際立たせています。フランスからの里帰り作品の貴重な2点。ゆっくりじっくり鑑賞してみて下さい!
伊万里柿右衛門様式色絵馬
鑑賞ポイント その3 呉市出身の「南薫造」。 |
近代日本洋画に大きな足跡を残した南薫造(1883-1950)。没後70年を迎え現在日本の各地で彼の画業を称えしのぶ展覧会が企画されています。
呉市安浦町出身の印象派画家、南薫造は、東京美術学校を卒業後、イギリス・フランスに留学し、若くして画壇での地位を築きました。風景画を得意な題材として瀬戸内海の農村や海景を描き、数多くの作品を残しています。また人物画においても味わい深い人間表現を演出しています。
広島県立美術館では彼の初期から晩年に至るまで、多くの名品を所蔵しています。広島県立美術館ならではの南薫造作品をご覧になって、あなたが魅力を感じる1点を見つけてみてはいかがでしょうか?
日の出 |
小童 |
蒲刈島風景 |
冬枯れ |
広島県立美術館には「圓鍔勝三」、「平櫛田中」、「ダリ」などの、まだまだ紹介出来ていない木彫・彫刻・洋画の所蔵品がたくさんありますので、またの機会にしっかり紹介できればと思っています。
広島県立美術館の発端は、小学校の美術館建設に向けた「1円募金運動」なのだそうです。言うなればここは、広島県民の美を愛する思いから建設された美術館です。このような美術館を訪れることで、広島の美の原点にも触れることができるのではないでしょうか? かくいう私にとっても、小さい頃、美に触れることができる唯一の場所でした。オススメです!
広島県立美術館 730-0014 広島市中区上幟町2-22 https://www.hpam.jp/museum/ |