わかるともっとおもしろい!美術のミカタ「ドービニーの庭」「麦わら帽子の女」

2020.05.29

みたことある!知っている!
…つもりになっている有名絵画。
視点を変えると知らなかった
面白さがまだまだみつかる!
美術家で広島女学院大学教授の三桝先生が
有名美術作品の新たなミカタをご紹介します。

今回はひろしま美術館の
コレクションの中から
ビンセント・ファン・ゴッホの
「ドービニーの庭」

オーギュスト・ルノワールの
「麦わら帽子の女」
です。

ひろしま美術館は1978年、広島銀行創設100周年の記念事業として造られた美術館。広島市の中心部に位置するここには、印象派の作品を中心に約300点のコレクションが収蔵され、その良質な作品は国内外でも高い評価を得ています。常設展示される作品たちは私たちを近代西洋美術の旅へ誘ってくれます。

「ドービニーの庭」

この作品、実は…

この絵にいたはずの
黒猫の行方は?

中でも、私の目を引くのが、このビンセント・ファン・ゴッホの「ドービニーの庭」。
ゴッホがこの世を去る2週間前に描かれたとされる、最晩年の作品です。まるで絵具チューブから直接描いたような荒々しさを持ちながらも、穏やかで優しい美しさを醸し出しています。ゴッホが尊敬する画家、ドービニーを敬愛する気持ちが溢れているようにも感じます。

実はゴッホ、もう1枚同じ「ドービニーの庭」を描いており、2枚の絵にはいずれも画面左下には、黒猫が描かれている…はずですが、ひろしま美術館の「ドービニーの庭」にはその黒猫がいない!

2008年に調査が行われ、もう1枚の作品と同じく、最初は黒猫が描かれていて、その後、何者かによって消されたことが判明!事実はここまで、真実はいまだに誰にもわかっていません。誰が何のために…?実にミステリアスな要素をこの絵は持ち合わせているようです。

黒猫はどこに?…ひろしま美術館の答えはこれ!

何と、エントランスやレストランなど、美術館のあちこちで、絵から消された黒猫が見つかります。粋な演出ですね。そんな視点から絵を見ると楽しさはもっと広がり、自分だけの感じ方も新たに発見できるものだと教えてくれます。

「麦わら帽子の女」

この作品、実は…

購入第一号の絵には
どんな思いが…?

もう1点、おすすめしたい作品があります。
ご存知、オーギュスト・ルノワールの「麦わら帽子の女」。これは、ひろしま美術館の初代館長、伊藤勲雄氏が一番最初に購入した記念すべき作品です。

「ルノワールはこの絵を描いた頃、リューマチを患いほとんど手が動かなかった。でもその時期にとても温かみのある作品を多く描いている。苦しかった晩年に。きっとこの作品はひろしまの原爆で苦しい思いをした人々の心を癒してくれると思って、最初に購入したのであろう」と古谷可由学芸部長(ひろしま美術館)は話してくれました。

ひろしま美術館のテーマ「愛とやすらぎのために」はこの作品からスタートし、その後所蔵された作品と共に今日まで私たちの心を癒し続けてくれているのです。

さあ、いかがでしょうか?
もう一度、ひろしま美術館の作品を見に出かけてみませんか?
美しいものはあなたの心をきっと動かしてくれるでしょう!

ひろしま美術館 
〒730-0011 広島市中区基町3-2(中央公園内)
https://www.hiroshima-museum.jp/

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